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「結婚しない人が増えた」と聞くと、私たちはつい、その人たちが何を考えているのかを想像します。自由でいたいのか。仕事が忙しいのか。相手が見つからないのか。
けれど、結婚していないという状態から、結婚したくないという意思までは読み取れません。同じ「今は一人です」の中に、一人の生活を選んだ人も、結婚を望みながら足場を整えている人も、まだ決めていない人もいます。
非婚化を理解する鍵は、意思・生活条件・関係が進む過程を分けることです。価値観の変化は確かに重要です。ただ、それだけでは説明しきれない部分を、社会学の研究は掘り下げています。
2026年9月に公表された最新調査を起点に、「結婚する人が減った」という一文の中身をほどいていきます。結婚を望む人の希望がかなう社会と、結婚しない人が肩身の狭い思いをしない社会は、同時に目指せます。

非婚化・未婚化・晩婚化の違い
まず、言葉をそろえましょう。日常会話では似た意味で使われますが、集計する対象が変わると、数字の意味も変わります。
- 未婚:結婚したことがない状態を指すのが統計上の基本です。離別・死別とは区別されます。
- 晩婚化:結婚する時期が遅くなることです。遅れて結婚することと、結婚しないままでいることは同じではありません。
- 非婚化:結婚しない生き方や、その広がりを論じる際に使われる言葉です。ただし、本人の意思まで測った統計なのかは、資料ごとの確認が必要です。
たとえば、ある年齢の未婚割合が上がっても、それだけで「一生結婚したくない人が増えた」とは言えません。結婚の時期が後ろにずれた可能性も、希望を実現する条件が変わった可能性も残っています。
この記事では、非婚化を結婚しない人の増加をめぐる広い論点として扱い、数字を読む場面では調査が実際に尋ねた言葉に戻ります。状態を測る質問と、意思を尋ねる質問を混ぜないことが出発点です。
最新データに表れた「結婚する意思」の変化
2025年調査では、男女とも低下
国立社会保障・人口問題研究所の第17回出生動向基本調査は、2025年6月に実施され、結果の概要が2026年9月11日に公表されました。[1]
18〜34歳の未婚者のうち「いずれ結婚するつもり」と答えた割合は、男性75.1%、女性77.8%でした。同じ報告書が示す2021年の値は男性81.4%、女性84.3%です。差はそれぞれ6.3ポイント、6.5ポイントとなります。[1]
| 18〜34歳の未婚者 | 2021年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 男性 | 81.4% | 75.1% |
| 女性 | 84.3% | 77.8% |
この数字は、結婚を将来の選択肢に入れる人が依然として多数であることと、その割合が前回より下がったことを、同時に示しています。「誰も結婚したがらなくなった」でも、「意識は何も変わっていない」でもありません。
また、対象は18〜34歳の未婚者です。既婚者を含む日本人全体の割合でも、すべての年齢の独身者の割合でもありません。見出しで主語を大きくすると、数字は簡単に別の意味になります。
意思は、将来の行動の確定ではない
結婚したいという回答から、実際に結婚する確率をそのまま計算することはできません。相手との出会いや合意、仕事、住まいなど、回答時点では決まっていない条件があるからです。逆に、今は結婚するつもりがなくても、その後に考えが変わる人はいます。
同調査には、結婚するつもりがない人に、将来その考えが変わる可能性を尋ねた設問もあります。ただし、そこで測っているのは本人が感じる可能性です。後年に追跡して、実際に考えや行動が変わったことを確認した数字ではありません。[1]
ここから「本当はみんな結婚したい」と読み替えるのも違います。変わる余地を認めることと、現在の選択を尊重しないことは別です。人は、今の意思をきちんと尊重されながら、後で考え直してもいいのです。
調査の数字を読むときの留意点
今回の独身者調査全体の有効票は6,756票、有効回収率は42.7%です。ただし、これは上の18〜34歳の未婚者だけの回答数ではありません。調査全体には、より上の年齢や離別・死別の人も含まれます。オンライン回答の導入など、方法上の変更にも注意が必要です。[1]
回収率を見ただけで調査が無意味になるわけではありません。一方で、回答した人と回答しなかった人が完全に同じとは限らないことも、忘れないほうがよいでしょう。速報である「結果の概要」の数値として、対象と公表時点を添えて読むのが適切です。
非婚化を読み解く三つの層
ここからは、調査と研究を生活の言葉に置き換えてみます。次の三つの層は、個人を分類する診断ではなく、「どこで話が食い違っているか」を確かめるための整理です。項目を開くと、具体的な問いが表示されます。
1|意思:どんな暮らしを望むか
結婚したい・したくない・まだ決めていない。今の答えを、まずそのまま受け止めます。
問い:周囲の期待を脇に置くと、私は何を望んでいるでしょうか。
2|条件:生活の見通しはあるか
収入、雇用、時間、住まい、ケア。意思だけでは動かせない条件もあります。
問い:望みを実現するうえで、今いちばん大きな障害は何でしょうか。
3|過程:どの段階にいるか
出会い、交際、生活の調整、婚姻。結婚の直前だけでなく、手前の段階にも目を向けます。
問い:次に必要なのは、出会いでしょうか。それとも休息や話し合いでしょうか。
意思――何を望むか
結婚したい、したくない、今は決められない。どれも出発点になります。ただし「結婚したい」の中にも、子どもを育てたい、暮らしを共にしたい、法的な関係を持ちたい、周囲の目から解放されたいなど、異なる願いが重なることがあります。
同じように「結婚したくない」も、一人の時間が好き、現在の生活に満足している、期待される役割が重い、過去の経験から距離を置きたいなど、一つの理由には収まりません。回答のラベルだけで、人の人生観を言い当てるのは難しいのです。

条件――その生活を組み立てられるか
希望があっても、生活の見通しが立たなければ、具体的な行動を先送りすることがあります。収入の額だけでなく、来月も働ける見通し、通勤時間、転勤の可能性、住まい、家族のケアなどが絡みます。
「結婚する気がないの?」という問いが、実は「今の条件で、二人の生活を想像できる?」という問いを含んでいることがあります。意思の問題として叱っても、条件の問題は解決しません。
過程――関係を次の段階へ進められるか
出会うこと、交際を始めること、交際を続けること、生活を調整すること、結婚を決めること。それぞれは別の段階です。
結婚の直前にだけ目を向けると、その手前で生じている難しさが見えなくなります。そもそも人と会う時間が取れない人に、結婚式の費用を下げる話だけをしても、届く支援にはなりにくいでしょう。
三つの層を分ける利点は、「結婚したいのなら頑張ればいい」「結婚しないのは自由になったからだ」という一言では見落とす事情を、具体的に扱えることです。
雇用の不安定さは、結婚のどこに関わるのか
男性の世代差を分解した研究
麦山亮太による2025年の研究は、日本の1945〜1984年生まれの男性について、雇用の変化と初婚・初出生の遅れを分析しました。最も古い出生コーホートと最も新しいコーホートの初婚率の低下のうち、雇用に関する構成の変化が説明する部分は26%と推定されています。[2]
これは「未婚男性の26%は雇用が原因」という意味ではありません。異なる世代の初婚率の差を、統計モデルと仮定に基づいて分解した結果です。今日のある個人が結婚する確率に、そのまま当てはめることもできません。
それでも示唆は明確です。非婚化をすべて好みの変化として説明すると、雇用条件が変わってきた部分を取り落とします。一方、雇用だけで世代差のすべてが説明されたわけでもありません。一つの原因で全体を説明したくなる気持ちを、研究は引き止めます。

結婚前の交際段階にもある差
麦山による2024年の研究は、同居していない交際関係も分析に組み込みました。非正規雇用や失業は、交際関係に入る段階と、交際から結婚へ移る段階の両方に、負の関連を持つことが報告されています。[3]
この研究を読むと、「相手がいない」と「生活が不安定」を別々の理由として並べるだけでは足りないことがわかります。仕事の状況は、結婚の決断以前の関係形成にも関わっている可能性があるからです。
ただし、関連があることと、すべての人に同じ因果関係があることは別です。不安定な雇用でも結婚する人はいますし、安定した仕事があっても結婚を望まない人はいます。集団の傾向を、個人の価値を採点する物差しにしないことが大切です。
「女性の価値観が変わった」だけで済ませない理由
働き続けたいという希望と、結婚したいという希望は、本来は両立しうるものです。それでも、両方を実現できる見通しが持てなければ、結婚の時期を先に延ばして考えることがあります。
柳下実・不破麻紀子の2017年の研究は、2007年の全国調査を使い、未婚女性が希望する結婚までの期間を分析しています。就業継続の意向や雇用の不安定性と、希望する結婚時期との関係を検討した研究です。[5]
ここで測られているのは、実際に何年後に結婚したかではなく、本人が希望した時期です。また、2007年のデータを、現在の女性全体の意識として扱うこともできません。
この研究から引き出せる問いは、「仕事か結婚か、どちらを優先したのか」よりも、「仕事を続けながら結婚する生活を、どれほど具体的に想像できたのか」です。価値観と生活条件は、互いに無関係な箱に入っているわけではありません。
たとえば、働き方が変われば、同じ人でも結婚後の生活を違って想像するかもしれません。反対に、家事やケアを誰が担うかという予想が変われば、同じ収入でも選択の感覚は変わりえます。これは研究結果そのものの言い換えではなく、条件と意思を切り離さないための考え方です。
結婚した人だけを見ると、何が抜け落ちるか
「どんな人同士が結婚しているか」という話は、興味を引きます。学歴、年齢、収入。実際に成立した組み合わせを見ると、結婚の仕組みが見えたような気がします。
しかし、結婚した人だけの表には、結婚していない人が載っていません。関係を望んだものの成立しなかった人も、最初から望まなかった人も、表の外にいます。
打越文弥の2018年の研究は、2015年SSM調査を用い、未婚者を含めて学歴別の結婚パターンを分析しています。既婚者だけを扱う分析では捉えにくい、結婚が成立するまでの違いを検討した研究です。[4]
この視点は、婚活の成功談を読むときにも役立ちます。「こうしたら結婚できた」という話は、その人の経験として意味があります。ただ、同じ行動をして結婚に至らなかった人や、その行動を取れなかった人が見えていなければ、再現性まではわかりません。
成功した組み合わせの特徴と、誰もがそこへ到達できる条件は別です。 これは結婚に限らず、就職や進学にも通じる、データを読む際の大事な区別です。
「選べる自由」と「選べない事情」の間
非婚化を歓迎する議論と、問題として捉える議論は、しばしば噛み合いません。前者は望まない結婚をしなくてよくなった自由を見ていて、後者は望む結婚を実現しにくい事情を見ているからです。
どちらか一方だけが現実というわけではありません。同じ社会に、両方が存在します。さらに一人の中にも、「今の生活が好き」と「条件が違えば結婚を考える」が同居することがあります。
そこで、非婚化を評価する問いを二つに分けると、議論が進みやすくなります。
- 結婚を望む人が、生活上の障害によって希望を諦めなくてよいか。
- 結婚を望まない人が、その選択によって不当に低く扱われていないか。
この二つは対立しません。結婚への支援を充実させるために独身者を否定する必要はなく、独身の尊厳を守るために結婚への希望を軽く扱う必要もありません。
問題は、結婚するかどうかを、本人の努力や人柄の通信簿にしてしまうことです。社会の条件が関わる現象を、個人の合否に変えてしまう。その瞬間に、分析は止まり、説教が始まります。
周囲の結婚と自分を比べて疲れたときに――結婚と社会比較の考え方
結婚しない生活を、関係のない生活にしない
結婚するかどうかと、人とのつながりを持つかどうかは、別の問いです。一人暮らしでも友人や地域のつながりを持てますし、結婚していても相談しにくい生活になることはあります。
だから、非婚という選択の妥当性は、「誰にも頼らず一人で完結できるか」で測らなくてよいのです。誰かと関わりながら暮らすことは、結婚した人だけの特権ではありません。

今の自分に戻る三つの問い
社会全体の数字を眺めた後は、問いの大きさを自分の生活に戻してみましょう。結婚する・しないの最終回答を、今日出す必要はありません。
- 周囲の評価をいったん脇に置くと、私はどんな日常を望んでいるでしょうか。
- 望む生活に近づくうえで、今いちばん足りないのは、お金・時間・人との接点・休息のどれでしょうか。
- 結婚の有無にかかわらず、困ったときに連絡できる相手や相談先を持てているでしょうか。
これらは、結婚できるかを判定するチェックリストではありません。「自分に問題がある」という大きすぎる結論を、手を付けられる小さな問いへ戻すためのものです。
たとえば、足りないのが休息なら、今すぐ出会いの予定を増やすことが最善とは限りません。足りないのが人との接点なら、最初の一歩は恋愛を目的としない活動でもよいでしょう。結婚への一本道を引くより、望む日常の具体像から考えるほうが、自分の意思を見失いにくくなります。

もう一段深く考えるための一冊
数字を確認した後に、結婚をめぐる言葉や前提そのものを考えたいなら、上野千鶴子・水無田気流の対談『非婚ですが、それが何か!? 結婚リスク時代を生きる』が、読書の候補になります。[6]
2015年刊行の本です。現在の統計を調べる資料としてではなく、結婚を当然とする見方を問い直す対談として選ぶのがよいでしょう。最新の数値が目的なら、この記事の参考資料に挙げた2025年調査を先に読むほうが適しています。
書籍の価格・在庫・版は販売先で確認できます。対談を手がかりに自分の考えを整理したい方は、目次や紹介文を確かめてみてください。
よくある質問
- Q非婚化は、結婚したくない人が増えたという意味ですか?
- A
それだけではありません。結婚への意思の変化と、実際に結婚していない割合の変化は、別に測る必要があります。希望があっても生活条件や関係形成の過程で実現しない場合があり、時期を先送りしている場合もあります。
- Q結婚する意思の割合から、将来の未婚率は予測できますか?
- A
その割合を裏返すだけでは予測できません。回答後に意思が変わる可能性も、希望しても実現しない可能性もあるためです。調査時点の意思と、その後に実際に起きる行動は区別して読む必要があります。
- Q非婚化の原因は、経済的な問題ですか?
- A
経済・雇用条件は重要な論点ですが、それだけで全体を説明できるとは限りません。研究の対象、世代、測定方法にも注意が必要です。意思、生活条件、出会いや交際の過程を分けると、単一原因では捉えにくい部分が見えてきます。
- Q結婚しないという選択は、後から変えてもよいのでしょうか?
- A
今の意思を尊重することと、将来の変更を認めることは両立します。結婚する方向にも、しない方向にも考え直せます。周囲への説明の一貫性より、自分が望む暮らしや相手との合意を確かめることが大切です。
数字の向こうにある、異なる暮らし
非婚化のデータは、社会の変化を知るための道具です。誰かの人生が正解かどうかを決める投票結果ではありません。
結婚の意思が弱まっている部分を認める。雇用や生活条件が希望の実現に関わる部分も認める。そして、結婚しない人を一つの性格や価値観でまとめない。この三つを同時に持つと、非婚化は「最近の若者」の話から、私たちがどんな生活を組み立てられる社会なのかという問いへ変わります。
望む人には、望む関係を築く余地を。望まない人には、説明し続けなくてもよい尊重を。必要なのは結婚する人としない人の勝敗ではなく、どちらにも暮らしの足場があることです。
結婚と幸福度の研究を読む――平均値と自分の暮らしを分ける視点
参考文献・一次資料
1. 国立社会保障・人口問題研究所「第17回出生動向基本調査(2025年)結果の概要」。2026年9月11日公表。対象・調査方法・結婚意思の集計を参照。 原文を読む
2. Mugiyama, R.(2025)“Decomposing delayed first marriage and birth across cohorts: The role of increased employment instability among men in Japan.” Demographic Research, 52, 635–688. 出版社掲載の要旨を参照。 原文を読む
3. Mugiyama, R.(2024)“Disaggregating the relationship between precarious employment and delayed marriage in Japan: Incorporating non-cohabiting partnerships.” Social Science Research, 124, 103093. 論文要旨を参照。 原文を読む
4. 打越文弥(2018)「未婚化時代における階層結合:夫婦の学歴パターンのコーホート比較分析」『理論と方法』33(1)、15–31。 原文を読む
5. 柳下実・不破麻紀子(2017)「就業継続意向・雇用の不安定性は未婚女性の希望する結婚までの期間に影響を与えるか?――結婚意識の期間的側面――」『家族社会学研究』29(2)、142–154。論文要旨を参照。 原文を読む
6. ビジネス社『非婚ですが、それが何か!?』書誌・内容紹介。上野千鶴子・水無田気流、2015年刊。 原文を読む
